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蕎麦の花
そばの花は茶人に欠かすことの出来ない茶花の一つでもある。それはあの白い 細かい花が丁度美人の白い歯並びを思わしめるような風情があるからである。
そばはまた花でもてなす山家かな 芭蕉庵桃青
開高 健は「そばの花」という随筆の中で次のように書いている「おそらく畑ではなくて山の道端に咲いているだけなら、そばはアカザや何かの、名もない雑草の一種として見過ごしてしまうしかないだろうと思われる姿態である。けれど、よく手入れされたことが一瞥してわかるつつましやかな山畑にいちめんに白い花が咲いているところを見ると、豪奢な華やぎはないけれど、野生と透明さの漂う、はかないような、可憐なような、声のない歓声を感じさせられるのである。花としては勿忘草と同じくらい小さくて、つつましやかで、けなげではあるけれどひっそりとしている。しかし、それがいちめんに群生して咲いているところを見ると、まだ声を出すことも知らない幼女たちが一斉に拍手しあっているような気配をおぼえさせられることがあって、ほほえましいのである。人の姿も鳥の影も犬の声もないような寂滅の山の道で、突然透明なにぎわいとすれちがうのである。」

